よくあるご質問

1.インパクト投資とは何か?

1-1 インパクト投資とは?

経済的リターンと並行して社会的もしくは環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資が「インパクト投資」です。「リスクリターン」という従来の資本市場の原理に「インパクト(社会・環境におけるポジティブな変化)」という新たな次元を加えた三次元の投資行動が世界で拡大しつつあります。

1-2 世界と日本の市場規模は?

インパクト投資の市場規模は国内外で拡大傾向にあります。2018年度の日本国内の推計投資残高は3440億円で2017年から約4倍程度増加しています。(2018年の日本のインパクト投資現状レポートはこちらをご覧ください:http://impactinvestment.jp/doc/G8-2018.pdf

インパクト投資は特に英米において普及しており、イギリスのインパクト投資の対GDP投資残高割合は日本の8倍に及びます※1

2018年現在、世界でインパクト投資を実施している機関の50%以上が過去10年以内に最初のインパクト投資を実施しており新規参入者による拡大が著しいことも特徴の1つと言えます※2。2018年の全世界におけるインパクト投資の運用資産額は5,020億ドルに上ります※2

1-3 インパクト投資の経済的リターンは?

インパクト投資に取り組む機関によって財務的リターンの見方は様々です。市場レベルのリターンを求める投資家もいれば、社会的インパクトを優先する投資家もいます。インパクト投資を実施する機関のグローバルネットワーク組織であるGIIN(Global Impact Investing Network)の調査によると、インパクト投資を実行する3分の2の機関が市場収益率と同等の収益を目標として設定しており、91%のプレーヤーが投資前の期待金銭リターンを達成していることが明らかとなっています※3

このようにインパクト投資では一般的な市場レートと同様のリターンを達成している機関が多くあり、社会的インパクトの追求は経済的リターンを追求することと必ずしも相反しないことが分かります。

1-4 インパクトを評価するには?

インパクト投資を「インパクト投資」たらしめるものが「社会的インパクト評価」です。社会的インパクト評価は投融資事業が生み出す社会的、環境的インパクトを定性、定量的に評価することを指します。投資家への説明責任及び当該事業における社会性の証明手段としてだけではなく、評価の活用による社会的インパクトの拡大、事業改善にも役立ちます。

事業全体のサイクルと並行して社会的インパクト評価を実施・活用することで事業の社会的な効果や価値に関する情報に基づいた事業改善や意思決定を行い、より大きな社会的インパクトの創出を志向する「社会的インパクト・マネジメント」を基調とした考え方が社会的インパクト評価の根底にあります。

投資判断におけるスクリーニングのみならず評価を通してインパクトの拡大を志向することにこそ、インパクト投資の特徴とその価値があるのです。

出所:内閣府共助社会づくり懇談会 社会的インパクト評価検討ワーキング・グループ(2016)「社会的インパクト評価の推進に向けて」

社会的インパクト評価の詳細については3-1「社会的評価イニシアチブ(SIMI)」のHPよりご覧ください。

1-5 ESG投資との違いは?

ESG投資とインパクト投資の主な違いは以下の3点です。

①意図:ESG投資はESGの要素を考慮することで長期的リスクの削減と収益の最大化を目指すのに対して、インパクト投資はインパクトの創出という明確な意図を持ちます。
②対象:ESG投資は全企業を対象としますが、インパクト投資は社会環境課題解決に資する製品・サービスもしくはそれらをコア事業とする企業が主な対象となります。
③インパクト評価:投資対象が社会面・環境面での課題解決に資する効果を評価し、投資判断を行います。

このように社会的インパクトの創造を事業意図に含む企業を対象に、社会・環境面での効果を評価することにインパクト投資の特徴があります。

2.なぜインパクト投資なのか?

2-1 社会課題解決への民間資金活用

少子高齢化が加速し、地方の過疎化などの社会状況の変化によって社会課題が山積する中、日本の財政収支は悪化し続け、公的資金を元手とした社会保障制度だけでは社会課題の解決が難しくなっています。近年取り組みが加速しているSDGsに関しても、その達成のためには年間2.5兆ドル必要と言われており、民間資金活用が必須となっています。

こうした認識は世界規模で広がっており、2018年にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスにおいて開催されたG20の首脳宣言においても「impact investment」の推進が明記されました※1

G20ブエノスアイレス・サミット首脳宣言

2018年、アルゼンチンがホストしたG20では共同宣言に初めてインパクト投資の推進が盛り込まれ、SDGs達成に向けたファイナンスギャップを埋めるための重要なリソースとして各国政府からの関心も高まっています。

今後は公的資金だけではなく、民間の資金やノウハウを生かした社会課題の解決がより重要性を増していきます。民間資金の動員のために如何に民間の資金を資金需要者に供給するかが焦点となっています。

2-2 社会に対応して企業の在り方も変化

近年、CSVを代表として自身の事業の持続性のために社会的課題を意識した企業経営・戦略が求められています。事業を行う上でキャッシュフローだけではなく、その事業が社会的問題を誘発・解決するリスク・可能性をも考慮し中長期的な視点に立ちながら経営を行っていく姿勢は、投資という文脈だけでなく広く企業経営においても求められる時代になっていると言えます。

2-3 投資の在り方も変化

インパクト投資と類似の取り組みとしてESG投資が挙げられます。機関投資家や大手金融機関などの「社会的価値を重視した金融へのシフト」を背景にESG投資市場は2016年時点には、全世界で23兆ドルに達しており、日本においても約4740億ドルの投資残高に達しています※2。ESG投資の投資手法(戦略)の中でも「インパクト/コミュニティ投資」が14年から16年にかけて146%の拡大を見せるなど、インパクト投資と親和性の高い投資分野はESG投資においても成長が見られます※2

3.誰がインパクト投資を行っているか?

3-1 エコシステム

インパクト投資市場は様々なプレーヤーや市場を支える諸制度によって成立しています。

資金供給者

【個人投資家】
富裕層個人や篤志家、エンジェル投資家はインパクト投資の黎明期を支えてきた重要な投資家でした。近年はリテール向けのインパクト投資商品が増えているほか、クラウドファンディングのプラットフォームを通じてインパクト投資に参画する個人も増加しています。特にミレニアル世代の若者がネットを通じてインパクト投資に取り組む事例が増えています。
【機関投資家】
欧米では民間財団が資産運用の一部をインパクト投資に組み込むことで業界全体をリードしてきました。最近は年金基金、大学の運用基金の参入が目立つ他、日本では保険会社による取組も始まっています。

仲介組織

仲介組織とは金融仲介機関やアドバイザリー、インパクト評価機関などを指します。

【民間金融機関】
大手銀行やベンチャーキャピタル、証券会社やアセットマネージャーがインパクト投資ファンドを組成・投資するなどいわゆるメインストリームの金融機関が積極的に参入し始めていると同時に投資型クラウドファンディングのプラットフォームのような新たな担い手も注目されています。
【政府系金融機関】
政策的意義の高い領域で金融サービスを展開してきた政府系の金融機関はインパクト投資との親和性を持ち、国内外のインパクト投資分野での取り組みのさらなる加速が期待されています。
【コンサルティングファーム】
インパクト投資事業の組成支援や社会的インパクト評価のコンサルティング等を提供しています。

資金需要者

営利・非営利を問わず社会課題の解決を志向する事業者がインパクト投資の対象ですが、株式会社の形態を取ることが多いです。事業の領域は多様でヘルスケア、教育・子育て、途上国の経済開発、環境、地方創生等が挙げられます。最近では大規模な資金調達を行って上場を目指すようなベンチャー企業もその投資先になっています。

エコシステムを支える組織や制度

【行政】
インパクト投資による社会課題解決や公共サービスの質の向上に注目して、行政による政策的な後押しも進んでいます。欧米では社会的投資に対する減税制度や社会的事業専門の法人格を作る等、政府が主導してインパクト投資を促進する施策を打ち出しています。
日本では未来投資戦略2018でソーシャルインパクトボンド(SIB)を含む成果連動型民間委託契約を促進する為に政府内の関係部署の設立やガイドラインの整備等が謳われています。2017年には神戸市及び八王子市でSIBが導入され、地方自治体でも関心が高まっています。

GSG国内諮問員会は休眠預金の活用を2015年より提案してきました。2016年に「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」が成立、2018年1月に施行されました。休眠口座の預金を民間公益活動に役立てる本制度はその資金の一部を呼び水としてインパクト投資をはじめとした持続的な資金循環を構築することが期待されています。

【GSG国内諮問委員会】
ビジネス、金融、ソーシャルセクター等の様々な分野の第一人者が参画するGSG国内諮問委員会はイギリスに本部を置く国際グループである『GSG: Global Steering Group for Impact Investment』日本委員会です。
分野を横断したプレーヤーが一同に集うことで市場全体を俯瞰してインパクト投資の拡大・促進に寄与する為の施策を議論しています。また、GSG国内諮問委員会は国内の政策形成及び現場での実践の深化を企図して提言書を発行しており、諸制度の整備や環境の整備を提案しています。SIIFはGSG国内諮問委員会の事務局を務めています。

日本における社会的インパクト投資の現状2018

GSG国内諮問委員会では毎年日本におけるインパクト投資の推計市場規模、最新のトピックス等を纏めたレポートを発行しています。

社会的インパクト投資の拡大に向けた提言書

GSG国内諮問委員会では2015年に日本におけるインパクト投資の発展に必要となる施策を纏めた提言書を発行しました。

【社会的インパクト評価イニシアチブ(SIMI)】
SIMIは⽇本において社会的インパクト評価を推進するために、社会的インパクト評価の現状や課題、将来⽬指す姿やそれに向けた取組などについて議論し、実⾏を主導するプラットフォームとして2016年に発足しました。現在150以上の加盟団体によって構成されており、上記のGSG国内諮問員会も共同事務局として参画しています。
SIMIは2020年までに社会的インパクト評価文化の醸成、社会的インパクト評価インフラ整備、社会的インパクト評価事例の蓄積・利用の3つのテーマの達成を目指しており、これらのテーマに基づきアクションプランを策定。このアクションプランに応じたワーキンググループを設置し、活動を行っています。
SIMIのHPでは社会的インパクト評価を実施する際に参考となる最新事例、レポートやツールセットを閲覧できます。

4.どのようにインパクト投資を行うか?

4-1 東近江におけるソーシャル・インパクト・ボンドを活用した
コミュニティビジネススタートアップ支援事業

期待される社会的インパクト
  • 地域課題の解決のために市民のお金が地域を循環することによる地域活性化
  • 行政事業の市民への見える化
  • 成果連動型契約による補助金事業の効率化
事業概要
東近江市で行われたソーシャル・インパクト・ボンド案件でコミュニティビジネスに対して民間資金を活用したスタートアップ支援を実施します。
東近江市が採択したコミュニティビジネスに対して中間支援団体プラスソーシャルインベストメントが発行する私募債を通して資金調達を行います。地域資源を活用して地域の課題解決を目指すローカルファイナンスの先進的事例です。
東近江市では「コミュニティビジネススタートアップ支援事業」として地域課題の解決にビジネスの手法を通じて事業を起ち上げる市内の事業者への補助を行っていました。しかし、行政からの補助だけでは取組が市民に認知されず、市民が事業者を応援するような仕組みができていませんでした。
こうした課題感のもと市民自らが投資家として事業に参画し、地域課題の解決を「自分事」として意識することができる本事業が発足しました。
資金の地産地消が生んだ好循環は市民と事業者を結び付け地域課題解決に新たな可能性を示しました。
事業実施体制
案件実施期間
2016年度
投資案件規模
200万円(50万円×4事業)
投資家
市内2団体、71人(市内52人、市外16人、県外3人)
投資先組織
がもう夢工房協議会、クミノ工房、NPO法人愛のまちエコ倶楽部、あいとうふくしモール運営委員会
その他のステークホルダー
東近江市、プラスソーシャルインベストメント株式会社、公益財団法人 京都地域創造基金、NPO法人まちづくりネット東近江

https://www.chiikinogennki.soumu.go.jp/jokyo/shiga/25213/2017-0302-1154-1809.html

4-2 新生企業投資インパクト投資ファンド

期待される社会的インパクト
託児機能付きオフィスの運営を通じ、子育て中の母親の社会復帰を実現する。労働力が不足する日本において、雇用を創出し、長期的には地域の活性化や出生率の増加に寄与することが期待される。
ファンド概要
日本では労働人口の減少が予想され、政府が女性活躍推進を進めているものの対策は十分であるとは言えません。出産・妊娠を理由に退職する女性は約6割に上り、一度子育てを理由に退職すると、たとえキャリアや経験がある女性であっても再就職を受け入れてくれる会社が少ない現状があります。
こうした社会状況の中でキャリアや経験のある女性が子育てと仕事を両立できる多様な働き方を支える社会インフラが求められています。
新生銀行グループの一員としてプライベートエクイティ業務を担う新生企業投資株式会社が初めて設立したインパクト投資ファンドです。「子育てと仕事の両立」「ワークライフバランス」という社会課題の改善に主体性を持って取り組みたいと考えるファンドマネジャーの社員3名の発意によって立ち上げられました。また、経営層における常に新しい取り組みを探索する気風も立ち上げに大きく寄与しました。
ファンド設定日・期間
2017年1月5日・10年間
ファンド規模
5億円
投資家
無限責任組合員(GP):新生企業投資株式会社、有限責任組合員(LP):株式会社新生銀行
投資対象
保育や学童、教育、家庭支援、育児と介護の両立支援の事業、女性活躍支援などのワークライフバランスに関する子育て関連事業を営むアーリーからレイタ―ステージの企業
投資先第一号企業
株式会社ママスクエア 2017年1月投資実行
ロジックモデル

4-3 野村アセットマネジメント ACI先進医療インパクト投資ファンド

期待される社会的インパクト
革新的治療の提供、医薬品・医療サービスへのアクセスの提供、医療費削減のソリューション、効果的な医療機器・サービス等の開発
ファンド概要
医療ニーズへの高まりや医療コストの増加などの医療分野における様々な課題が日本だけでなく世界規模で発生し、こうした状況の中でロボットやAIの活用といった先進テクノロジーを駆使した新しいソリューションを提供する企業も登場しています。
医療分野に関する独自のエコシステムを構築し、革新的な社会貢献の形を体現してきたアメリカン・センチュリー・インベストメント・マネジメント・インク(以下「ACI」)に本ファンドの運用の一部を委託し、実際の投資先企業の決定においてインパクト投資やESG投資の観点も加えたファンダメンタルズ分析を行っています。
事業実施体制
ファンド実施設定日・期間
2018年10月23日・2028年12月19日まで
ファンド規模
815億円(2018年11月時点)
ファンド運営者
野村アセットマネジメント株式会社
ファンド実質投資先

【世界各国の先進医療関連企業】

事例1:Illumina, Inc.
遺伝的変異と機能分析のための統合システムの開発・製造に取り組み、ヒトゲノムのシーケンシングかかるコストを大幅に削減。シーケンシングのコスト低減とスピードの向上によるバイオ医薬品の研究開発や疾病診断と治療に対する改善という社会的インパクトが期待される。
事例2:Intuitive Surgical
手術用ロボットをはじめとした手術用製品市場におけるリーディングカンパニー。同社の革新的な製品は、1)失血の減少、2)医師の手術部位の見やすさの向上、3)入院期間の短縮を実現し、医療費の削減と感染の可能性の低減による健康改善という社会的インパクトが期待されている。
事例3:Teladoc
同社は、モバイル機器、ビデオおよび電話を介していつでもどこでもヘルスケアを提供するTelehealthプラットフォームの提供に取り組んでいる。 患者の利便性を向上させることに加えて、遠隔医療による診察費用を削減、サービスが不十分な地域の患者への医師のアクセシビリティ確保という社会的インパクトが期待される。
その他のステークホルダー
マザーファンドの運用の一部をアメリカン・センチュリー・インベストメント・マネジメント・インクに委託しています。

4-4 広島県における広域連携型SIB及びクラウドファンディングを活用した大腸がん検診受診勧奨事業

期待される社会的インパクト
早期がん発見による、県民のガン死亡者数減少とQOLの向上
事業概要
1981年以降日本人の死因の第一位は「がん」です。早期発見による治療を行うことが肝要ですが、がん検診受診率は国の定める目標50%を達成できていません。
本事業は経済産業省の2017年度健康寿命延伸産業創出推進事業の一環として、ヘルスケア分野におけるSIBの広域連携モデル導入をケイスリー株式会社が推進し、広島県及び6市が大腸がん検診の受診推奨にSIBを活用して実施するものです。
事業実施体制
案件実施期間
2018年~2021年(3年間)
 2018年10月~2019年8月:受診勧奨を行う事業実施期間
 2019年4月~2021年3月:評価業務を行う評価期間
投資案件規模
約22百万円
投資家組織名
個人投資家(ミュージックセキュリティーズ株式会社仲介によるクラウドファンディング)
一般財団法人社会的投資推進財団
株式会社広島銀行
株式会社みずほ銀行
投資先組織名
株式会社キャンサースキャン
最終支払い者
広島県及び6市(竹原市、尾道氏、福山市、府中市、三次市、庄原市)
投資先組織名
ケイスリー株式会社
ロジックモデル