よくあるご質問

1.インパクト投資とは何か?

1-1 インパクト投資について

インパクト投資とは経済的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資です。従来の投資はリスク・リターンの2次元で評価しますが、インパクト投資はリスク・リターン・インパクトの3次元で評価します。

1-2 世界と日本の推計投資残高

インパクト投資の投資残高(推計)は国内外で拡大傾向にあります。
2019年の調査で把握できた世界のインパクト投資残高は4,040億ドル(約44兆円)で、実際には7,150億ドル(約78.6兆円)に達していると推計されています。

アンケート調査で確認された日本のインパクト投資残高は1兆3,204憶円あり、市場の最大推計値は5兆3,300億円に達していると推計されています(2021年度調査)
出典:日本におけるインパクト投資の現状と課題2021調査報告書)

1-3 インパクト投資における経済的リターンの考え方

インパクト投資に取り組む機関によって経済的リターンの見方は様々です。市場レベルのリターンを求める投資家もいれば、インパクトを優先する投資家もいます。
インパクト投資を実施する機関のグローバルネットワーク組織であるGIIN(Global Impact Investing Network)の調査によると、回答した294機関のうち88%は「期待通り」もしくは「それ以上の経済的リターン」を獲得と回答しており、決してインパクト創出のために経済的リターンを犠牲にしているわけではないことが窺えます。 (出典:Annual Impact Investor Survey 2020, The GIIN

出所:Annual Impact Investor Survey 2020, The GIIN

1-4 インパクトを評価する方法

企業や非営利組織の活動やサービスが、社会や環境に与えた変化や効果を可視化するのが「インパクト測定」です。

通常、以下のようなロジックモデルを使ってインパクトを設定し、PDCAを回すことによって評価を行います。

出所:内閣府共助社会づくり懇談会 インパクト測定検討ワーキング・グループ(2016)「インパクト測定の推進に向けて」

社会的な効果に関する情報にもとづいて事業改善や意思決定を行い、インパクトの向上を志向することを「インパクトマネジメント」といいます。

インパクト測定の詳細については3-1「インパクトマネジメントイニシアチブ(SIMI)」のウェブサイト※1よりご覧ください。

1-5 ESG投資とインパクト投資の違い

4つの中核的な特性
ESG投資は従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。ESG投資はリスク・リターンを最大化・適正化する為に環境や社会への影響を考慮するものですが、インパクト投資は環境や社会へのポジティブな変化を生み出すことがそもそも投資の目的と位置づけられています。
インパクト投資は4つの要素で構成されています。

①意図がある
②経済的リターンと社会的・環境的インパクトを追求する
③広範なアセットクラスを含む
④インパクト測定を行う

このようにインパクトの創造を事業意図に含む企業を対象に、社会・環境面での効果を評価することにインパクト投資の特徴があります。

2.なぜインパクト投資なのか?

2-1 社会課題解決への民間資金活用

少子高齢化が加速し、地方の過疎化などの社会状況の変化によって社会課題が山積する中、日本の財政収支は悪化し続け、公的資金を元手とした社会保障制度だけでは社会課題の解決が難しくなっています。近年取り組みが加速しているSDGsに関しても、その達成のためには年間最大7兆ドルが必要といわれており、民間資金の活用が必須となっています。(出典:UNCTAD

こうした認識は世界規模で広がっており、2018年にアルゼンチンで開催されたG20ブエノスアイレス・サミットの首脳宣言においても「impact investment」の推進が明記され※1、また2019年にG20大阪サミットの首脳スピーチにおいて「ブレンディッド・ファイナンスを含むその他の革新的資金調達メカニズムが各国の共同の取り組みを高めていく上で重要な役割を担う」と言及されるなど、インパクト投資が推進されることにつながっています。

※1G20ブエノスアイレス・サミット首脳宣言

2018年、アルゼンチンがホストしたG20では共同宣言に初めてインパクト投資の推進が盛り込まれ、SDGs達成に向けたファイナンスギャップを埋めるための重要なリソースとして各国政府からの関心も高まっています。

2-2 社会に対応して企業の在り方も変化

近年、SDGsの広がりを背景として社会的課題を意識した企業経営・戦略が求められています。事業を行う上で収益だけではなく、その事業がステークホルダーに及ぼすネガティブな影響を勘案することはもちろん、社会的課題を解決する可能性をも考慮し中長期的な視点に立ちながら経営を行っていく姿勢は、投資という文脈だけでなく広く企業経営においても求められる時代になっているといえます。

2-3 投資の在り方も変化

インパクト投資と類似の取り組みとしてESG投資が挙げられます。機関投資家や大手金融機関などの「社会的価値を重視した金融へのシフト」を背景にサステナブル投資残高 は2017年末時点では、全世界で31兆ドルに達しており、日本においても約2.2兆ドル(日本のみ2018年3月末時点)の投資残高に達しています* 。ESG投資の投資手法(戦略)の中でも「インパクト/コミュニティ投資」が16年から18年にかけて79%(年平均成長率:33.7%)の拡大を見せるなど、サステナブル投資内におけるインパクト投資と親和性の高い投資分野は成長が見られます※2

3.インパクト投資のプレイヤー

3-1 エコシステム

インパクト投資市場は様々なプレーヤーや市場を支える諸制度によって成立しています。

資金供給者

【個人投資家】
富裕層個人や篤志家、エンジェル投資家はインパクト投資の黎明期を支えてきた重要な投資家でした。近年はリテール向けのインパクト投資商品が増えているほか、クラウドファンディングのプラットフォームを通じてインパクト投資に参画する個人も増加しています。特にミレニアル世代の若者がネットを通じてインパクト投資に取り組む事例が増えています。
【機関投資家】
欧米では民間財団が資産運用の一部をインパクト投資に組み込むことで業界全体をリードしてきました。最近は年金基金、大学の運用基金の参入が目立つ他、日本では保険会社による取組も始まっています。

仲介組織

仲介組織とは金融仲介機関やアドバイザリー、インパクト評価機関などを指します。

【民間金融機関】
大手銀行やベンチャーキャピタル、証券会社やアセットマネージャーがインパクト投資ファンドを組成・投資するなどいわゆるメインストリームの金融機関が積極的に参入し始めていると同時に投資型クラウドファンディングのプラットフォームのような新たな担い手も注目されています。
【政府系金融機関】
政策的意義の高い領域で金融サービスを展開してきた政府系の金融機関はインパクト投資との親和性を持ち、国内外のインパクト投資分野での取り組みのさらなる加速が期待されています。
【コンサルティングファーム】
インパクト投資事業の組成支援やインパクト測定のコンサルティング等を提供しています。

資金需要者

営利・非営利を問わず社会課題の解決を志向する事業者がインパクト投資の対象ですが、株式会社の形態を取ることが多いです。事業の領域は多様でヘルスケア、教育・子育て、途上国の経済開発、環境、地方創生等が挙げられます。最近では大規模な資金調達を行って上場を目指すようなベンチャー企業もその投資先になっています。

エコシステムを支える組織や制度

【行政】
インパクト投資による社会課題解決や公共サービスの質の向上に注目して、行政による政策的な後押しも進んでいます。欧米では社会的投資に対する減税制度や社会的事業専門の法人格を作る等、政府が主導してインパクト投資を促進する施策を打ち出しています。
【GSG国内諮問委員会】
ビジネス、金融、ソーシャルセクター等の様々な分野の第一人者が参画するGSG国内諮問委員会はイギリスに本部を置く国際グループである『GSG: Global Steering Group for Impact Investment』の日本国内の諮問委員会です。
分野を横断したプレーヤーが一同に集うことで市場全体を俯瞰してインパクト投資の拡大・促進に寄与する為の施策を議論しています。また、GSG国内諮問委員会は国内の政策形成及び現場での実践の深化を企図して提言書を発行しており、諸制度の整備や環境の整備を提案しています。SIIFはGSG国内諮問委員会の事務局を務めています。

日本におけるインパクト投資の現状と課題

GSG国内諮問委員会では毎年日本におけるインパクト投資の推計市場規模、最新のトピックス等を纏めたレポートを発行しています。

インパクト投資拡大に向けた提言書

GSG国内諮問委員会では2015年から日本におけるインパクト投資の発展に必要となる施策を纏めた提言書を発行しています。

【インパクト測定イニシアチブ(SIMI)】
SIMIは⽇本においてインパクト測定・マネジメントを推進するために、インパクト測定の現状や課題、将来⽬指す姿やそれに向けた取組などについて議論し、実⾏を主導するプラットフォームとして2016年に発足しました。現在150以上の加盟団体によって構成されており、上記のGSG国内諮問員会も共同事務局として参画しています。
SIMIは2020年までにインパクト測定文化の醸成、インパクト測定インフラ整備、インパクト測定事例の蓄積・利用の3つのテーマの達成を目指しており、これらのテーマに基づきアクションプランを策定。このアクションプランに応じたワーキンググループを設置し、活動を行っています。
SIMIのHPではインパクト測定を実施する際に参考となる最新事例、レポートやツールセットを閲覧できます。

4.インパクト投資の具体的な事例

SIIFは様々なステークホルダーと連携して、インパクト投資を用いた事業を展開しています。